宅飲みの、その先へ。
映画を止めて、スマホを伏せて、BGMだけが静かに流れている夜更け。そんな時間に求めたいのは、何かを足す一杯ではない。むしろ、夜をやさしく締めくくるための“引き算のマリアージュ”だ。
今回の提案は、「漬けカツオの出汁茶漬け」と「タンカレーのジンリッキー」。和と洋の美学が静かに交差する、極めてパーソナルなペアリング。
タンカレーがもたらす、静かな余韻
ジンの王道・タンカレーをベースにしたジンリッキーは、ジュニパーベリーの芯のある香りが魅力。
ライムと炭酸だけを加えた、甘さのないストイックな構成が、鰹の出汁茶漬けと好相性。潔い味わいが、出汁のやさしさとにごらず、静かに寄り添う。
" カクテルとは、料理に寄り添うだけではない。 テーブルのストーリーを象る、いわばテーブルのストーリーテラーである。"

感覚が整う、マリアージュの新定番
ジンリッキーの一口目には、ほんのり柑橘の涼しさと、タンカレー由来の植物的な苦味がある。
その後に運ぶ出汁茶漬けの一口が、その苦味をさらりと受け止め、
鰹のうまみとともに、胃の奥へとすっと落ちていく。
炭酸の刺激で味覚がリセットされ、漬けの甘辛さがまた新しく感じられる。
交互に口にすることで、味ではなく“感覚の流れ”を整えるような食体験が生まれるのだ。
ひとりの夜にふさわしい深みのある歓び
外で飲んだ帰りでもない、誰かと騒いだ夜でもない。
ただ、自宅のダイニングで、自分の手で整える一日の終わりのひととき。
そんなシチュエーションに、漬けカツオの茶漬けとタンカレーのジンリッキーはよく似合う。
主張しすぎず、でも確かに“余韻”を残してくれる二つの存在。
一日を締めくくるための、ささやかな誇りと静かな歓びを、テーブルの上に。
プロフィール
鈴木海人 – バーテンダー/俳優
イベントバーテンダー・カクテルレシピ考案 / Vtuber「上戸アペリ」総合運営
「一杯の酒に、人生の余韻を。」
都内バー勤務を経て、現在はオンライン配信を拠点に活動。クラシックなカクテルから、季節のハーブや自家製ボタニカルを用いた一杯まで、記憶に残る味と香りを設計する。酒の知識だけでなく、音楽、言葉、香りを複合的に操る感性で、グラスの中に世界観を築き上げるスタイルが特徴。
“飲むことで、誰かの心が少しほどけるなら”——そんな想いを胸に、日常と非日常のあわいに立つバーテンダー。あなたの夜に、静かで鮮烈な余韻を届ける。
