バーボンソーダ

おとなの美食時間。バーボンソーダの余韻で仕上げる、紳士の嗜み。

ホタテのステーキに合わせる一杯──バーボンソーダをすすめる理由

今回、私がホタテのステーキに合わせるお酒として提案するのは、 バーボンソーダ だ。

ホタテという海鮮を、あえて ワイルドにステーキに仕上げた 今回の一皿。
白ワインやビール、日本酒などが定番のペアリングだが、この料理には、それだけでは 少し物足りなさを感じた。

「ステーキ」にしたことによる、力強さと野趣。
その空気感に呼応する酒として、私は味わいだけでなく、 料理が纏う雰囲気に寄り添う一杯 を選びたかった。
そして辿り着いたのが、バーボンソーダだった。

使用したバーボン──オールドクロウの魅力

今回使用したのは、 オールドクロウ(Old Crow)
19世紀初頭に誕生した、 歴史深きバーボンの元祖的存在 である。

開発者は、サワーマッシュ製法を確立したジェームズ・クロウ博士。
マーク・トウェインや、松田優作も愛したことで知られている。

その味わいは、 華美な装飾を排した無骨さと、ほのかに香る繊細な甘み。
この「無骨さと繊細さの同居」こそが、塩気と甘みが共存するホタテのステーキに、見事に呼応するのだ。

" カクテルとは、料理に寄り添うだけではない。 テーブルのストーリーを象る、いわばテーブルのストーリーテラーである。"

鈴木海人(バーテンダー/俳優)

ホタテのステーキとバーボンソーダ

なぜ「バーボンソーダ」と呼ぶのか──言葉に宿る時代の美学

今でこそ「ハイボール」とほぼ同義に語られるこの飲み方だが、あえて「バーボンソーダ」と呼ぶことに 美学がある と私は思っている。

1980年代後半、日本がバブル景気に沸いた時代──
「ハイボール」という言葉は古臭いものとされ、代わりに「バーボンソーダ」という呼び名が、 洗練された大人の響き として好まれた。

“あの頃”を知る紳士たちにとって、バーボンソーダという言葉には、時代の記憶が宿っている。
そしてその響きが、料理と酒の時間に品格を与えてくれるのだ。

この組み合わせがもたらす、もう一段上のディナー体験

ホタテをステーキに仕立てることで、甘みに深みが生まれ、海のミネラル感が濃厚に立ち上がる。

そこにバーボンソーダの炭酸が加わることで、一口ごとに リッチな旨みがリセットされ、また新たに感じられる のが心地よい。

さらに、 オールドクロウの焦がしキャラメルのニュアンスと、オーク樽由来の香ばしさ が、ホタテの余韻に 重層的な深み を加えてくれる。

これは、甘みを洗い流すのではない。
別の角度から芳醇さを引き継ぐアプローチ。
その絶妙なマリアージュが、食卓に“静かな贅沢”をもたらすのだ。

ホタテのステーキとバーボンソーダ。
この一杯とともに、 あの頃の余韻を、今夜の一皿に重ねてみてほしい。

プロフィール

鈴木海人 – バーテンダー/俳優

イベントバーテンダー・カクテルレシピ考案 / Vtuber「上戸アペリ」総合運営

「一杯の酒に、人生の余韻を。」
都内バー勤務を経て、現在はオンライン配信を拠点に活動。クラシックなカクテルから、季節のハーブや自家製ボタニカルを用いた一杯まで、記憶に残る味と香りを設計する。酒の知識だけでなく、音楽、言葉、香りを複合的に操る感性で、グラスの中に世界観を築き上げるスタイルが特徴。
“飲むことで、誰かの心が少しほどけるなら”——そんな想いを胸に、日常と非日常のあわいに立つバーテンダー。あなたの夜に、静かで鮮烈な余韻を届ける。

鈴木 海人

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