炭火焼きホタテと枝豆のポタージュ

炭火焼ホタテ・枝豆のポタージュとレモンラドラーとのペアリング

夏の夕暮れに似合う、一杯とひと皿

気温が落ち着き、空の色が柔らかくなりはじめる夕方。
この時間に似合うのは、どこまでも軽く、どこまでも優しい、そんな食と酒の組み合わせだと思っている。


今回の提案は、「炭火焼ホタテと枝豆のポタージュ」に、「岩手県ベアレン醸造所のレモンラードラー缶」を合わせるというもの。


派手さはない。
だが、確かに輪郭のあるやさしさが、そこにはある。
炭火の香り、枝豆の青さ、レモンの涼しさ──


その三つが互いに主張しすぎず、ただ静かに隣り合う。

炭火焼きホタテとレモンラドラー

炭火焼ホタテと枝豆のポタージュ、そのバランスの妙

ベースは、枝豆とブイヨンで煮た野菜をピュレ状にし、生クリームで整えたなめらかなポタージュ。そこにパルメザンチーズのコクがほんのり溶け込み、塩気と旨味に奥行きを加える。仕上げに加えるレモンゼストが、全体の甘さを引き締める役割を果たしている。


ホタテはレアぎみに火を通し、外側には炭の香ばしさ、内側にはとろりとした甘みを残す。

この“外は香り、中はミルキー”という質感が、枝豆の青さとクリームのまろやかさと響き合う。


盛り付けは高さを出すように意識されており、視覚的にも“レストランクオリティ”の印象を強める。
食べるごとに、枝豆の香り、チーズのコク、ホタテの甘み、レモンの爽快感が
波のように引いては寄せるように感じられる、そんな完成度の高い一皿だ。

炭火焼きホタテと枝豆のポタージュ

ラードラーという“日常に最も近いカクテル”

ラードラーとは、本来ビールとレモネードを1:1で割ったドイツ発祥のカクテル
運転中のサイクリストが、休憩中に「もう少し飲みたい、でも酔いたくない」と言って生まれたとされる。
まさに、“軽さと味わいの共存”を目指した飲み物だ。


今回使用したのは、ベアレン醸造所(岩手県)のレモンラードラー缶
フルーツビールとしての完成度が非常に高く、レモンの香りがナチュラルで、甘さもくどくない。
アルコール度数はわずか2.5%。
強くない、でも物足りなくもない。
“食事のすぐ横にあるべき酒”という定義に、これほど合う一杯もそうない。

なぜこのペアリングがちょうどいいのか

ホタテの炭の香ばしさと、枝豆の青さ。
この“陸と海の香り”を、レモンの酸がそっと包み込む。
ビールの苦味は控えめで、泡もやさしい。
まるで、きつくならない風のように、口の中を通り抜けていく。


食事の余韻を壊さず、でも確かに「次の一口を誘う」。
それがこのラードラーの、最も美しい役割だ。

レモンラドラー

「ごちそう」よりも、「うれしい」

この組み合わせには、“特別な日のごちそう”のような派手さはない。
だが、ひとりの部屋で、「今日の夕方はちゃんと終われたな」と思える食卓がつくれる。
そんな、感情に寄り添う美味しさがある。


火を入れたホタテと、青さを活かしたポタージュ。
そこに冷えたラードラーを合わせる。
それだけで、ほんの少し、生活が整うような感覚がある。


わざわざじゃなくていい。ただ、ちゃんと。
その気持ちに寄り添ってくれる、
夏の夜の静かなマリアージュだ。

プロフィール

鈴木海人 – バーテンダー/俳優

イベントバーテンダー・カクテルレシピ考案 / Vtuber「上戸アペリ」総合運営

「一杯の酒に、人生の余韻を。」
都内バー勤務を経て、現在はオンライン配信を拠点に活動。クラシックなカクテルから、季節のハーブや自家製ボタニカルを用いた一杯まで、記憶に残る味と香りを設計する。酒の知識だけでなく、音楽、言葉、香りを複合的に操る感性で、グラスの中に世界観を築き上げるスタイルが特徴。
“飲むことで、誰かの心が少しほどけるなら”——そんな想いを胸に、日常と非日常のあわいに立つバーテンダー。あなたの夜に、静かで鮮烈な余韻を届ける。

鈴木 海人